なぜハードロック・ヘヴィメタルが好きな人には、おもちゃ・ゲーム・戦隊ものも好きな人が多いのか?

ライブハウスの物販で、ふと周りを見渡すと気づくことがあります。ロングヘアに黒Tシャツのいかにもなメタラーが、帰り道にガシャポンの前で真剣な顔をしている。あるいは、好きなバンドの話をしていたはずが、いつの間にかスーパー戦隊の歴代ロボの話になっている。

「あるある」と思う方も多いのではないでしょうか。今回は、ハードロック・ヘヴィメタルと、おもちゃ・ゲーム・戦隊もの(特撮)がなぜこんなに相性がいいのか、自分なりに考えてみました。

ハードロックやヘヴィメタルは、音だけで完結しない音楽です。アルバムジャケット、ロゴ、衣装、歌詞の物語性、ステージ演出まで含めてひとつの「世界」を作ります。

ドラゴン、魔王、騎士、宇宙、終末。メタルが描くモチーフは、そのままファンタジーやSFの世界です。ゲームのRPGや特撮ヒーローが描く世界と地続きなので、片方を好きになった人がもう片方にも自然に入っていけます。

メタルの世界には「様式美」という言葉があります。ツーバスの連打、ギターソロの泣きのフレーズ、ドラマチックなキメ。「こうなったら最高」というお約束を、全力でやり切る美学です。

戦隊ものも同じです。名乗り、変身ポーズ、巨大ロボへの合体、必殺技。お約束が来るとわかっていても、いや、わかっているからこそ燃える。この「お約束を信頼する」感覚が、両者の根っこでつながっていると感じます。

メタルファンはレコードやCDを集め、盤の違い、帯の有無、ツアーグッズにまでこだわります。この「モノとして所有したい」気持ちは、フィギュアや超合金、ゲームソフトの収集とそっくりです。

バンド側も、モノの魅力をよくわかっています。たとえばKISSは、フィギュアやランチボックスをはじめ膨大なグッズ展開で知られていますし、Iron Maidenのマスコット「エディ」も立体物として愛されています。キャラクターを立て、アイコン化してグッズにする。この発想自体が、おもちゃ文化とよく似ています。

実は、音楽面でも接点は多いんです。

子供の頃に聴いていた主題歌やゲームBGMが、実は最初のハードロック体験だった、という人は意外と多いはずです。

いちばん大きいのは、これかもしれません。メタルは、大真面目にかっこつけることを恐れない音楽です。炎、ドクロ、鎖、巨大な機材。冷静に見ればやりすぎなくらいなのに、全力でやるから説得力が生まれます。

戦隊ヒーローも同じで、大人が本気でポーズを決め、本気で叫びます。「かっこいいものはかっこいい」と素直に言える土壌が、どちらのファンにもあるのだと思います。

メタルファンは、流行が変わっても好きなものを好きでい続ける人が多いです。その姿勢は、「おもちゃもゲームも特撮も、大人になっても楽しんでいい」という態度と相性抜群です。

好きなものを好きと言える仲間がいると、ジャンルの壁は意外と簡単に越えられます。ライブ会場で、おもちゃ屋で、ゲームのイベントで、同じ空気をまとった人に出会う。それが、重なって見える理由のひとつなのでしょう。

ここまでは僕の仮説ですが、実はプロのミュージシャンの中にも、はっきり「好き」を公言している人たちがいます。

海外編

カーク・ハメット(Metallica)
6歳の頃からホラー映画の関連グッズを集め始めたという筋金入りのコレクターです。2012年にはそのコレクションを紹介する本『Too Much Horror Business』を出版し、さらに自身のおもちゃブランド「Kirk Von Hammett Toys」も立ち上げました。本人は「人生をおもちゃ集めに費やしてきた」という趣旨の発言をしています。そのコレクションはサンフランシスコ国際空港内の博物館でも展示され、モンスターのおもちゃも並びました。メタルの巨人がおもちゃ箱を堂々と開けているわけです。 Q&A: Metallica’s Kirk Hammett on Horror Fans, Hanging With Kurt Cobain +4

ハーマン・リー(DragonForce)
ギターを始めたきっかけは、ビデオゲームをたくさん遊んでいたことだと語っています。バンドのサウンドもキーボードやエレクトロニクスで、パックマンなど往年のアーケードゲームの効果音を再現するような要素が特徴です。代表曲「Through the Fire and Flames」は『Guitar Hero III』に収録され、ゲームファンにも広く知られるようになりました。 www.okgazette.com +2

マット・ヒーフィ(Trivium)
子供の頃からゲームで遊び、アニメを見て、日本語も話していたと振り返っています。日系アメリカ人で、熱心なゲーマーとしてTwitchでも大きな成功を収めており、Wacken Open Airで初のメタル・ゲーミング・ヴィレッジを主催したこともあります。ライブ会場にゲームの遊び場を作ってしまうあたり、「メタル×ゲーム」の合流点そのものです。 from heavy metal to live streaming +2

レミー・キルミスター(Motörhead)
ゲーム好きとしても有名でした。ロサンゼルスのバー「Rainbow Bar & Grill」の定位置でゲーム機を遊び、ハイスコア表に自分の名前を入力していました。ポートランドのアーケードでアタリの『Tempest』を遊び、2位と3位のハイスコアを出したという逸話も伝わっています。またゲーム『Brütal Legend』には声と姿の両方で出演し、1992年にはレミーが主人公のアミガ用ゲーム『Motörhead』も作られました。 Lemmy Roars Again +2

スコット・イアン(Anthrax)
こちらは「おもちゃにされる側」を楽しんでいるタイプです。NECAから自身の8インチのアクションフィギュアが発売され、ドラマ『ウォーキング・デッド』にゾンビ役で出演した姿の頭部パーツも付属しました。本人は以前からウォーカー(ゾンビ)になってみたかったと語っています。さらに1987年当時の姿を再現した2つ目のフィギュアも作られました。 ANTHRAX Guitarist SCOTT IAN Gets Action-Figure Treatment +2

日本編

影山ヒロノブ(LAZY / JAM Project)
LAZYはハードロック志向のバンドで、LOUDNESSの高崎晃さんらと結成されました。そのLAZYが再結成後の第1弾シングルとして発表した「ULTRA HIGH」は、『ウルトラマンダイナ』の後期エンディングテーマでした。影山さん自身もアニメ・特撮ソングの王子と呼ばれ、JAM Projectのリーダーを務めています。ハードロックから特撮主題歌へ、という道筋がそのまま形になっている人です。 dic.nicovideo.jp +2

アニメタル
アニメソングをヘヴィメタルでカバーするバンドで、2005年には特撮ヒーロー中心のアルバム『アニメタル・マラソンVII 〜戦え!メタル・ヒーロー〜』を発表し、『魔法戦隊マジレンジャー』や『特捜戦隊デカレンジャー』などのスーパー戦隊作品が取り上げられました。1997年には「特撮でいこう」というシングルも出しています。まさに「メタル×戦隊」を看板にしたバンドです。 jitashejitashe

人間椅子
ハードロック・ヘヴィメタル色の強いバンドですが、実はバンド名は、特撮ヒーロー番組『愛の戦士レインボーマン』の敵組織「死ね死ね団」から借りて、最初は「死ね死ね団」と名乗っていたそうです。のちに同名のバンドの存在を知って、江戸川乱歩の小説にちなんだ「人間椅子」に改名しました。バンドの出発点に特撮番組がある、という面白いエピソードです。 niinii

マーティ・フリードマン(元Megadeth)
Megadethを離れたあと日本に移り住み、『ジョジョの奇妙な冒険』などのアニメやゲームにギターで参加しています。『ソニックと暗黒の騎士』や『美少女戦士セーラームーンCrystal』、『B: The Beginning』などでも演奏しており、日本のアニメ・ゲーム音楽の現場で活躍するメタル出身ギタリストの代表格です。 jojowikijojowiki

こうして並べてみると、「メタルを愛する人がおもちゃやゲームも愛する」のは、僕の気のせいではなさそうです。コレクションを公開する人、ゲームで遊び倒す人、自分がフィギュアになって喜ぶ人。みんな、好きなものを隠さずに楽しんでいます。

ハードロック・ヘヴィメタルと、おもちゃ・ゲーム・戦隊ものが好きな人の重なりは、次のような共通点から生まれているのではないでしょうか。

  1. 世界観を丸ごと楽しむ姿勢
  2. 様式美とお約束を愛する心
  3. モノを集め、愛でるコレクター気質
  4. 音楽面での実際の接点
  5. 「かっこいい」に全力になれる素直さ
  6. 大人になっても好きでい続ける気持ち

もちろん、これはあくまで僕の実感ベースの仮説です。みなさんはどう感じていますか? 「自分はこうだった」というエピソードがあれば、ぜひコメントで教えてください。

5 COMMENTS

shunchan030188

わかりすぎる…! ライブの物販でガチャ回してるメタラー、見たことあります(笑)

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NOBYUKI

様式美と戦隊のお約束、確かに同じ匂いがします。名乗りとギターソロは同じ種類の興奮ですよね。

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匿名

大人になっても好きでいていい、の部分に救われました‼

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