以前、「英語を習っているのになかなか伸びない理由」という記事を書きました。ただ、あの記事では伝えきれなかったことが、まだたくさんあります。今回は、その「言い足りなかった部分」についてお話ししたいと思います。
① 学習の頻度
英語を習っている方の多くは、週1回、1回1時間ほどのレッスンを受けています。仕事や学校、レッスン費用のことを考えれば、それが現実的なラインなのだと思います。
でも、率直に言います。それだけでは足りません。
外国語は、本来、その言語が話されている国で、毎日その言語に触れながら、少なくとも10年ほど学び、使い続けて、ようやく「ある程度できる」と言えるようになるものだと、私は考えています。ところが、日本にいる私たちは、日常で英語に触れる機会がほとんどありません。
さらに言えば、「週1回・1時間」というのは、あくまで仕事や学校、費用を考えた上での最低ラインです。それなのに、そのレッスンを休みがちだったり、独学も続かなかったりする方が少なくありません。
もし、この最低ラインさえ確実に守る自信がないのなら、「なぜ自分は英語が伸びないんだろう」という疑問は、少し矛盾しているのではないでしょうか。教える立場から正直に言うと、ここは戸惑ってしまう部分でもあります。
ここで、もうひとつ大事なことがあります。こう言われると、「たまには体調も崩すし、他の予定も入る。毎週必ず1回なんて守れないなら、矛盾していると言われるくらいなら、最初からやめてしまおう」と考える方もいるかもしれません。でも、それはあまりにも極端な発想です。これだけグローバル化した時代に、「やらない」という選択ができる立場の人が、いったいどれだけいるのでしょうか。
② 学ぶ意志がない?
日本で教えている外国人講師たちが、口をそろえて指摘することがあります。それは、生徒に学ぼうとする意志がないということです。
では、なぜ意志がないのか。それは、日本の人たちが英語の必要性を感じていないからです。
では、なぜ必要性を感じないのか。それは、自分の日常生活に影響がないからです。
そう、その通りです。ただ、ここで本当に日常生活に影響がないのかどうか、一度じっくり見つめ直してみる必要があります。
③ 英語は本当に日常生活と無関係なのか
これから、今の日本において、英語が日常生活に本当に何の影響も及ぼしていないのかどうかを、ひとつひとつ検証していきます。反論のある方は大歓迎です。普段は考えもしなかったところに、こんな影響があったのか!と驚く準備を、今のうちにしておいてください。
まず、現在の日本の情勢を見てください。自民党は結党以来、政権を離れたのはわずか約4年だけで、長年ほとんど政権交代がないまま、円は約40年ぶりの安値圏に沈みました。GDPの世界順位も下がり続け、2023年にはドイツに抜かれて4位になり、IMFは2027年にはインドとイギリスにも抜かれて6位になると予測しています。1人当たりGDPはOECD38か国中24位で、比較可能な統計がある1994年以降で最低です。「先進国」と胸を張って言える状況ではなくなりました。物価の上昇も続いており、円安による輸入コストの上昇が物価を押し上げていると日銀も分析しています。庶民の暮らしも、国民の老後の備えも、非常に厳しくなっています。
「それが英語と何の関係があるの?」と思われるでしょう。実は、とても深い関係があります。
英語とは、単に海外旅行で買い物をするためのものでも、外国人の友達を作るためのものでもありません。ある程度英語ができる日本人を観察してみてください。多くの人が、きちんとした会社に勤めています。そして、どこか漂ってくる雰囲気も、日本で生まれてずっと日本だけで育った人とは、何かが違うと感じたことはありませんか?
その「違い」にこそ注目すべきです。英語がある程度のレベルに達した人は、英語を通じて、英語圏の国々の基本的な考え方も一緒に身につけています。英語圏の人たちの根本を何も知らないのに、英語ができるということはあり得ません。
考えてみてください。日本には、何十年も暮らしているのに日本語が話せない外国人がいますよね。そうした人たちの多くは、日本の与党のことも、社会保険制度のことも、漢字も、この国のさまざまな仕組みも知らないまま、なんとなく暮らしています。ここが重要なのです。その国に関心がなく、毎月、自分の生活に必要なだけの給料が入ってくるなら、なぜ日本語を学ぶのでしょうか。なぜ英語を学ぶのでしょうか。
残念ながら、こうした国民が一人ひとり集まって国全体をつくっているので、日本は今のような状況になってしまったのです。決して大げさな話ではありません。
つまり、英語を学ぶと、考え方も変わり、世界を見る目も広がり、日常生活の細かいことから大きなことまで、対処の仕方が変わります。なぜなら、世界の人たちとより多く接することで自分たちを振り返り、初めて「比較」ができるようになるからです。「あの人たちのここは良いけれど、ここは良くない。自分たちはこれを学ぼう、これは取り入れないようにしよう」と気づけるようになるのはもちろん、英語ができれば、世界情勢についても偏りのない情報に触れられるようになります。
日本で暮らす外国人の目から見て、いちばん笑ってしまう表現が「日本一」です。それだけを見ても、この国がどれほど閉鎖的なガラパゴスなのかがわかります。
ここで、例をひとつ挙げてみましょう。2024年12月、韓国では、当時の大統領が戒厳令を宣言し、軍隊を国会に送り込んで国民を威嚇するという出来事がありました。国会議員たちが駆けつけて解除を議決し、戒厳令は約6時間で解除されました。大統領は弾劾され、今年2月には、ソウル中央地裁が尹錫悦(ユン・ソギョル)元大統領に対し、内乱の首謀者として無期懲役の判決を言い渡しました。法の裁きを受けることになったのです。また、フランスでは昨年11月、2026年度予算案で年金の引き上げを凍結する方針が示され、物価高の中で購買力が下がるとして、退職者たちが街頭に出て抗議しました。これらを「私たち日本人はマナーがいいから、そんなことはしない。しかも他国のことだから、自分には関係ない」と片づけてしまってよいのでしょうか。
ここで、ちょっと待ってください。ここまで読んで、「この人は、日本も気に入らないことがあるたびに、外国のようにデモをして国をひっくり返せと言いたいのか」と思った方がいるなら、それはあまりにも単細胞な考え方です。問題の核心はそこではありません。ほら、まさにそういうところが、ひとつの国で生まれ、ずっと自分の国がいちばんだと信じてきた、井の中の蛙的な発想なのです。どのような方法で国を変えるかよりも、変えたいという意志があるかないかが大切なのです。
変えたくない、ですか?自分の給料が毎月きちんと入ってくればいい、英語はわからなくてもいい、ですか?日本の低い出生率(2025年の出生数は約67万人、合計特殊出生率は1.14で、いずれも過去最低)も、経済も、政治も、何ひとつ良くならないのに?それなら、あなたこそ自分のことしか考えていない利己的な人です。ここで読むのをやめて、出て行ってください。お互いに時間の無駄です。この記事は、少しでも英語や日本の未来、政治問題に関心がある人のための記事なのですから。
韓国は、日本の半分にも満たない人口と面積でありながら、今では平均賃金やインフラなどの面で日本を上回っています。OECDの統計では、平均賃金は2014年以降、韓国が日本を上回り続けています。日本人が何と言おうと、これは事実です。かつて日本の植民地だった国であることを思い出した上で、あらためて見つめ直す必要があります。
私が韓国で中学・高校生だった頃、韓国では留学ブームが起こり、多くの人がアメリカや日本など、より豊かな国へ出て、たくさんのことを学んで帰ってきました。今の韓国の社会・経済を牽引している中心人物の多くは、その頃に外国で学んだ人たちです。その留学を支えた土台は、何と言っても英語でした。
統計を見てください。昨年(2025年)のEF英語能力指数だけを見ても、韓国の英語力は世界48位で、かつてイギリス領だったインド(74位)よりも上です。日本は96位で、フィリピン(28位)、ベトナム(64位)、インドネシア(80位)といった国々よりも低い順位です。それでも、日本が、日本の庶民の暮らしが、英語と関係ないと言えるでしょうか。
英語を知っていて、海外の事情にも明るい人、考え方が柔軟な人たちが、はたして、これほど何の成果も出していない同じ政党に、何十年も票を入れ続けるでしょうか。はたして、今の自分の生活に満足するでしょうか。
④ 英語があると、何が変わるのか
第一に、情報が変わります。日本語の情報だけに触れていると、日本の中から見た日本しかわかりません。「海外のニュースも、どうせ日本語に翻訳されたものを読めば同じではないか」と思う方もいるでしょう。しかし、同じではありません。翻訳されて日本語で届くのは、日本のメディアがあらかじめ選んだ情報だけです。そして、その日本のメディア自身が、記者クラブという閉鎖的な仕組みの影響を強く受けています。記者クラブとは、官公庁などが記者会見への出席を加盟社の記者に限っている、報道機関の団体のことです。国境なき記者団(RSF)の2026年の報道の自由度ランキングで、日本は62位、「問題あり」に分類されており、記者クラブの閉鎖性や、メディア内での自己検閲の横行が指摘されています。
もちろん、記者クラブは法律で定められた検閲機関ではありませんし、日本の報道のすべてがそこを通るわけでもありません。ただ、取材先との距離が近すぎるために、自ら批判を控える「自己検閲」が働きやすい仕組みであることは、国内外から繰り返し指摘されてきました。実際、テレビ局で働く私の知人の記者からも、国内の報道は記者クラブの影響を強く受けていると聞きました。
海外のニュースや統計、研究を英語で直接読めるようになれば、日本が世界のどこに立っているのかを、他人の解釈を介さず、自分の目で比べられるようになります。海外のメディアが日本をどう報じているのかも、自分の目で確かめられます。先ほどお話しした「比較」ができるようになるのは、まさにここです。
第二に、選択肢が変わります。円の価値が下がり、物価が上がっている今、日本の中だけで稼ぎ、日本の中だけで使う人は、その影響をそのまま受けてしまいます。英語ができれば、海外の企業、海外の市場、海外の情報という選択肢が生まれます。日本に残るのか、外に出るのかを自分で選べる人と、そもそも選べない人とでは、同じではいられません。
第三に、英語は試験の点数ではなく、自分と国を自分で判断するための道具です。必要性を感じないという方は、先ほどの問いに戻ってみてください。本当に自分の生活と関係がないのか、と。
おわりに:英語は「選択」ではなく「必須」です
ここまで、学習の頻度、学ぶ意志、英語の必要性、そして英語があると何が変わるのかをお話ししてきました。最後に、いちばん伝えたいことを書きます。
英語は、あってもなくてもいい「選択」ではありません。この時代を生きるための「必須」です。
英語ができないと、情報は誰かが選んで翻訳したものしか手に入らず、比べる相手も、判断の材料も、他人の手の中にあることになります。その結果、国や政府の言うことを、そのまま受け取りがちになってしまいます。
一方、英語ができれば、世界の情報を自分の目で読み、自分の国を外から眺め、比べて、自分の頭で考えることができます。国や政府に振り回されず、自分の考えで自分の人生を選び取れるようになる。これが、英語がもたらしてくれるいちばん大切なものだと、私は考えています。
「変えたい」という意志も、そこから生まれます。比べてみて初めて、「このままでいいのだろうか」という疑問が湧いてくるからです。
だからこそ、もう一度お願いします。英語は、余裕のあるときにやる趣味ではありません。その道具を手に入れるために、まずは大げさな覚悟ではなく、週1回1時間という最低限の約束を守ることから始めてください。それだけでは足りないことは、最初にお話しした通りです。そこから少しずつ、英語に触れる回数と時間を増やしていきましょう。
参考資料
英語力の統計
- EF English Proficiency Index(EF公式)
- nippon.com「Very Low Proficiency: Japan Drops into Bottom Group in English Ability Ranking」(2025年版:日本96位、韓国48位、インド74位)
- Human Resources Online「2025 ranking: English proficiency levels around Asia」(フィリピン28位、インドネシア80位ほか)
- Tuoi Tre News「Vietnam returns to global moderate English proficiency group: EF」(ベトナム64位)
- EF EPI 2025 フィリピン ファクトシート(PDF)(フィリピン28位)
- Wikipedia「EF English Proficiency Index」(英語力と1人当たり所得・輸出・イノベーションには正の相関があるとEFが分析)
※EF英語能力指数は、EFのオンライン英語テストを受けた成人のデータに基づく指標であり、各国の国民全体を代表する調査ではありません。
日本の政治・経済・人口
- Arab News Japan「Japan’s Liberal Democratic Party: an election bulldozer」(自民党は結党以来、政権を離れたのは約4年のみ)
- The Globe and Mail「Japan election results 2026」(2026年2月の総選挙で自民党が圧勝)
- ロイター(NST掲載)「Yen heads for biggest weekly drop since May despite Tokyo’s support pledges」(円が対ドルで約40年ぶりの安値)
- ロイター(Mahoning Matters掲載)「Yen nears weakest in 40 years as BOJ hike fails to stem rout」(2027年初めに物価上昇率が約3.5%に達するとの予測)
- ロイター(Kontan掲載)「BOJ Sees Boost to Inflation from Weak Yen Becoming Larger」(円安が物価を押し上げているとの日銀の分析)
- The Japan News(Asia News Network掲載)「IMF projects Japan’s GDP to fall to world’s 5th after India in 2025」(2023年にドイツに抜かれ4位に)
- 時事通信(nippon.com掲載)「Japan Projected to Rank 6th in 2027 GDP, behind India, U.K.」(IMF予測:2027年に6位へ)
- 時事通信(nippon.com掲載)「Japan’s Per-Capita GDP Drops to 24th among OECD Countries」(1人当たりGDPはOECD38か国中24位、1994年以降で最低)
- nippon.com「Baby Decline: Births in Japan Drop for the Tenth Successive Year」(2025年の出生数67万1,236人、合計特殊出生率1.14、いずれも過去最低)
- 時事通信(nippon.com掲載)「Japan 2025 Births Hit Record Low of 671,000」
日韓の比較
- Korea Herald「S. Korea’s gender pay gap worst in OECD」(OECD統計:韓国の平均賃金は2014年以降、日本を上回る)
- Statista(OECDデータ)「Average annual wages in major developed countries」(2024年、日本はG7で最も低い)
- Bamwor「South Korea vs Japan」(CIA World Factbook)(人口:韓国約5,150万人、日本約1億2,300万人/面積:韓国約9.97万km²、日本約37.8万km²)
韓国の戒厳令とフランスの年金デモ
- GlobalPost「Former South Korean President Sentenced to Life for Insurrection」
- ABC「South Korea’s ex-president Yoon Suk Yeol sentenced to life in prison over insurrection」
- AP通信(Tribune掲載)「Former South Korean president receives life sentence for imposing martial law in 2024」
- The New York Times(Hawaii Tribune-Herald掲載)「Ex-South Korea leader is sentenced to life in prison」
- The Local France「Why are pensioners protesting across France on Thursday?」
記者クラブと報道の自由
- nippon.com「報道の自由度:世界ランクで日本は62位、G7では米国に次ぎ低い」
- Reporters Without Borders「Reform of Kisha Clubs demanded to end press freedom threat」
- South China Morning Post「Is self-censorship behind Japan’s ‘problematic’ press freedom ranking?」
- Wikipedia「Kisha club」
- BCCJ Acumen「Japan’s kisha clubs」(国連特別報告者による指摘)
- Dr Sanae Fujita(Essex大学)「Japan’s blurred vision of media freedom」

週1回すら守れていないことにドキッとしました。『やめる』より『戻ってくる』ことが大事だと思い直しました。まずは週1回から習慣にします。
記者クラブの存在は知っていましたが、英語で海外メディアを読むようになって日本の報道との温度差に気づきました。「比べて初めてわかる」、という指摘はその通りだと思います。
今は翻訳アプリやAIがあるので、英語が必須というのは言い過ぎでは?英語ができなくても困らない人は大勢います。
私は10代の時に英語を諦めた人間の1人です。
この記事の内容の視点は目から鱗で非常に興味深く、心に刺さるものがあります。
AIでたしかに便利になったのは確かで、それだけで充分な人もいるでしょうけど、
自分の口から発した英語で相手と会話できることを想像すると、やっぱりAIには超えられない喜びがありますよね。