外国人講師から見る日本の英語教育 ㊦

私教育について

では、数え切れない程存在する英会話スクールや、個人レッスンの方はどうなのか実態をみてみよう。日本で英語を取得するには、様々な大手英会話スクール及び小規模型塾、個人レッスンという選択肢が考えられる。そのうちどれも努めたことのある僕自身からの意見だと、こういった塾や個人レッスンは昔からあったもので、一般論として義務教育の英語レッスンよりかは少人数で集中的なので、その分の効果は期待できる。しかし、全体的に考えると、日本が普段英語に対し抱いている劣等感やジレンマからは、未だに抜け出せていない。その理由を考察してみよう。

先ず、英会話スクール。僕自身が長年現場で働きながら感じた第一問題点は、スクール側の講師の採用の仕方である。これはお子様を英会話スクールに通わせようと思っている保護者の方々に、是非知って頂きたい点でもある。それはなにかというと、どこの英会話スクールも、短期間しか日本にいない先生が圧倒的に多く所属しているが、彼らが何故長く日本にいないのかはおいて、「先生たちがそもそも日本に長くいる気がない」ことに注目すべきだ。「短期間滞在」はつまり、その大半が「そこまで日本の文化や日本人の子どもの性質は分からない、日本語力もそこまで高くない」とのことで、「日本語がそこまで分からない」ってことは、「子どもたちにおいて英語のどういうところが難しいのかも分からない」とのことになってしまうことだ。そして、「子どもの質問に対して英語でしか説明ができない」ってことは、「子どもたちの理解度にも限界が生じる、長くて2、3年くらいで塾を辞め、先生も国を去る」という、英語力向上の面では「悪循環」と言える状況が、永遠と繰り返されるのだ。

ほとんどの英会話スクールは、運営を維持するために、先生が辞めたらとにかく素早く別の先生を見つけ、空いた枠を埋めるが、ただ興味本位で日本に来ている外国人さんはそこら辺に沢山いるので、雇う側、雇われる側の間であれだけ採用が簡単に決まるということは、先生の素質やスクール側の教育方針に信頼が出来るか疑わしいと、僕自身の現場の経験からよく分かっている。

過去、僕自身が応募をしてみた英会話スクール 10ヶ所のうち、実際先生の英語力をテストされたところは、たった2ヶ所である。残りは全部就労ビザの有無だけを問われ、とにかく「スタートはいつからがよろしいですか?」とのスタンスであった。尚、今まで英会話スクールで一緒に働いた日本人スタッフで、英語で「コミュニケーション」と呼べる程のコミュニケーションが取れて、外国人の先生たちとちゃんとやり取りができたスクールは、たった1ヶ所だった。こういった英会話スクールの現状を知っている保護者が、ちゃんと信頼できる外国人の先生を選んで1対1の個人レッスンを望むのだ。結論として事実上、義務教育での英語レッスン、英会話スクール、個人レッスンのうち、一番効果が高いのは個人レッスンだと、講師として強く言いたい。

日本を含む非英語圏の国の英語教育産業というのは、最初から「英語は楽し!!」「難しくない!」と普通に宣伝をするが、そういったものは全て一言で「マーケティング戦略」に過ぎないことを忘れないで欲しい。英語は、まずある程度のレベルに至らないとちゃんと話せないので、当然楽しくもないものである。そして、根気強い努力と勉強の末、完璧じゃなくても一応喋れるようになっている人は、身に着けた英語力を活かせ、SNSやメディアに振り回されず自分の判断で世界情勢を分別することもできるようになる。英語力がある人は、表面的ではない本当の意味での交流が可能となるのはもちろん、延いては新しい人生観や、哲学まで生まれる可能性も高いので、語学力から得られる価値というのは、お金には換算できない程、大切な知的財産である。

我々ができること

英語を学ぶ対象が子どもであっても、英語に向き合う正しい姿勢が絶対に必要だ。学校の先生及び親が、子どもから「ここは日本なのに、なんで英語なんか勉強しなきゃいけないの?」と質問されるときが本当に大事な瞬間なのだ。親がちゃんとした説明ができず、ただ「他の子もやってるから」や、「よく分からないけど進学にとにかく必要だから」などの説明こそ、一番子どもにとって納得いかないだろう。学校の先生や親としては、「英語が分からないと世界のことも分からないし、世界のことが分からないと時代的に世界から遅れを取って、我が日本国民の生活に色々影響が出る」ということを、どうにかせめて小学生以上の子どもには、理解できるよう分かりやすく伝える必要がある。もし「そのような説教は子どもにとって重すぎる」と、反論する方には次のように告がせて頂きたい。いくら子どもであっても、はっきりした目的がないと、そもそも勉強へのモチベーションが心から生まれるはずがないのだ。このご時世に、英語取得の重要性を子どもにまともに伝えられない親、又は学校は、自ら北朝鮮のような鎖国主義を無意識的に招いている、ということを、くれぐれも認識しておいてもらいたい。

最後に

僕の考えは、語学の勉強こそが最強の自己開発だと思うと同時に、個人的には、最も有益な趣味にもなると主張したい。何度も繰り返し言わせて頂くが、今の時代で生き残るには、世界中誰もが英語を学ぶことが必然である、という現状をしっかりと見つめ、一旦学ぼうと決めた以上、今までとは全く違った方法で徹底的に学んだ方が良い。それから、低すぎる今の全体の基礎英語力を、至急、せめて平均値までには引き上げるべきだということを、くれぐれも分かって頂きたい。最近流行りのYoutube向け塾やプログラミングスクールよりも、まずなにより優先すべきものは英語だと、それが未来に備えるパワーだと、僕は確信を持って強調させて頂きい。

日本の有識者層や芸能人等、いわゆる「イケてる」人々の中には、英語圏の国に住んでいる場合が多いが、彼らが故郷である日本を去る理由は、きっと自国に対し不満な点があるからだろう。彼らには輝く名誉と十分な経済力があるのにも関わらず、わざわざ英語を習って、時には差別をうけながらでも外国で生活をする理由を考えてみて頂きたい。彼らは、間違いなく日本語しか喋れない人たちには分からない世界観を求めているのであろう。

決して僕は、日本へ誹謗批判をしたいわけではないことを、はっきりと言わせて頂きたい。しかし、残念ながら皆さんがメディアを通じて想像する程、日本って実際にはそこまで世界中に知られていないのである。この点は恐らく現在外国で長年住んでいらっしゃる日本の方々も同意できるのではないかと思うが、西洋の国々の一般的な人々は、地図上に日本がどの辺りなのか、韓国、中国との違いはなにか、どんな文化なのか等、好きとか嫌いとかじゃなく、単純に興味がないのが現実である。日本に居ながらもどうしても第三者の目線で日本を見てしまう僕としては、日本のテレビで、連日「外国人も大好きな日本の寿司」や、「台湾は親日で植民地時代について感謝をしている」などのようなマスコミの言動は、大変危険であって洗脳にしか見えない。

なんと言っても歴史上の「強国」というと圧倒的に英語圏の国が多く、その英語圏の国たちは弱国を狙い、様々な利益を取ってきた。今は国益の形は多少変わったかもしれないが、結局経済力や文化的コンテンツでアジアの国々に圧迫をかける面では一緒である。もし日本が、元々英語を母国語として喋る国だったら、今みたいにわざわざ米軍を駐屯させ、自力ではなく外国の軍事で国を守ってもらっていると、皆さんは思いますか?アメリカとあまり関わりもないが英語を喋るオーストラリアとニュージーランドの場合を考えてみよう。あなたは、オーストラリア人やニュージーランド人が、アメリカ人から差別をされたなんて話は聞いたことがないと思う。アジアの国々が「英語を喋れないことで差別するのは悪い」と主張し続けていれば、いずれは差別を辞めてくれる時がくるだろうと、あなたは本当に思いますか?英語が母国語ではなくても充実した英語教育を受けながら育ったヨーロッパの例えばドイツ人が、アメリカを旅行する際、一応困らないくらいの英語を喋っている場面を、あなたは見たことがあるだろうか。見たことがある方は、それを日本人と比べ、どういう風に受け止めたのだろうか。

日本人が英語に対して、重く、難しく考え、英語から離れれば離れるほど、英語圏の国々はその弱点を利用し、色々な手段で非英語圏の国々に手を伸ばし影響を与える。今までの世界史がそれを証明している。語学力は、自分の国を、家族を、友だちを、無知や不当な物事から守る手段だと言っても過言ではない。現在の日本は、国民に気をかけていない政治、格差、後を絶たない増税の上、国家競争力は64ヵ国中過去最低の35位を更新する一方、国民の生活水準を表すGDPは一人当たり、戦前日本の植民地だった韓国や台湾とほぼ同水準である。

出典:世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング – 世界経済のネタ帳 (ecodb.net) 最終更新日:2023年10月11日

これは、日本の国際地位が輝いていたバブル時代に比べ遥かに下がっている証拠であり、その根底には、衰退している教育が原因であることを、我々は直視すべきである。

  1. フィンランド
  2. オーストラリア
  3. スウェーデン
  4. エストニア
  5. スロベニア
  6. ポーランド
  7. デンマーク
  8. ベルギー
  9. チェコ
  10. カナダ
  11. 韓国
  12. オランダ
  13. リトアニア
  14. 日本
  15. ドイツ                                                 出典:「OECD Better Life Index Education」総合ランキング 世界教育水準ランキング2022年6月現在(日本は41ヶ国中14位) | 最速資産運用 (ma-bank.net)

英語を話せない教育では世界で戦えない。大学院まで進学している優秀な人々も含め、全国民英会話音痴のような状態では、海外進出もインバウンドの迎え入れも出来たものではない。

さあ、それでもあなたは、自分の子どもに、英語なんかそこまでやらなくても自分の給料さえ毎月出ていれば良いと、外国のことなんか分からなくても「日本は他の外国より安定した良い国だから大丈夫だ」と言うつもりでしょうか。本当に将来、あなたのこどもが大人になっている頃、英語力がないあなたのこどもが良い会社に就職し、豊かな生活を送れているという自信はありますか?

4 COMMENTS

匿名

高校で英語教師をしてます。
非常に耳が痛い内容の記事ですが、核心ついてますね。
日本の英語教育は本当になんとかしないと未来はないと自分も思います。

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J

コメントありがとうございます、現況を急に変えるのは無理でしょうけど、段階的に変え始めなきゃいけないと思います。あなたのような意識の高い教師がいらっしって幸い希望はあると信じます!

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ぷーにゃん

はじめまして。

ちょうど今、5歳になる娘の英語の勉強をどうするか悩んでます。幼児向けの英語教室に行かせてましたが馴染めず一旦やめさせました。

個人レッスンというものがあること初めて知ったので、興味があります。

どういうところで個人レッスンの先生を探したらいいのかなどアドバイスを頂けたら嬉しいです。

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J

記事を読んでくださってありがとうございます、個人レッスンなのですが、まずは外国人講師が見つかるようなサイトを検索してもらった方が良いと思います。良かったらいくつかのリンクをお送りしますよ。

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